Loading...

Journal

Journal
特別連載 Vol,1

特別連載 Vol.1
ファッションジャーナリスト向千鶴さんが選ぶオーヴィルの一着




ファッションやアート、ビジネスの世界で活躍している魅力的なゲストを迎え、ファッションについてお話しを伺う新連載がスタート。第一回目のゲストは、ファッション業界専門紙「WWD JAPAN」サステナビリティ・ディレクターも務めるファッションジャーナリストの向千鶴さんです。オーヴィル ファッション ディレクター川﨑瑶子とのスペシャル対談でお届けします。


着る側のことを本当に考えて作る服。



川﨑瑶子(以後 川﨑) 今日はオーヴィルにお越しいただきありがとうございます。向さんには今までもWWD JAPANサステナビリティ特集でご取材いただき、また展示会でオーヴィルをご覧いただいてきました。今日はサステナビリティのこと、ファッションのことなどいろいろお話を伺わせてください。

向千鶴さん(以後 向) どうぞよろしくお願いいたします。

川﨑 オーヴィルは2024年春夏コレクションからスタートし、この秋冬コレクションで2シーズン目を迎えました。向さんからご覧になってオーヴィルはどんなブランドだと思われますか?

 私はWWD JAPANでサステナビリティを担当していまして、最初そう言う視点でブランドを探していて、サステナビリティの価値観を大切にしているブランドとして出会いました。ただ展示会に伺いコレクションを拝見した時に、一人の個人として「欲しい!」と思いまして・・・(笑)
オーヴィルを手に取ると、たくさんの素材の中から選りすぐられたのだなあと分かる素材感が印象的でした。着たいと思わせてくれる素材とパターン、そして着る人それぞれの個性が引き立つよう考えられているデザインが素晴らしいと思いました。確認すると結果環境配慮型の素材であることがわかるなど、サステナビリティの観点からも魅力が見えてきました。



川﨑 ありがとうございます。サステナビリティをご担当されていて、その点が後になるというのはアリなのですか?(笑)

 そういうものを探していました!サステナビリティって有るべき論から入ってしまうことが多々あるのですが、どんなに環境や人権に配慮して作ったものでも誰にも手に取ってもらえなければ、言葉は悪いですが「ゴミになる」。世の中に必要のないものになってしまいます。

何のために洋服があるのかと言うと「誰かを幸せにするための1着」だと常々思っています。「背中を押してくれる」とか「自信を持てる」とか「着心地がいい」など、いろいろな価値があると思うのですがそれがなければ存在価値がない、作り手の押し付けになってしまうと思います。

私から見てオーヴィルはサステナビリティについて考えながらも、着る側のことを本当に考えて作ることが先に立っていて、それはすごく重要なことだと思います。

川﨑 向さんの仰る通りサステナビリティありき、クリエイションありき、イマジネーションありきのコレクションを作ることも一つかと思いますが、私は着てくださる方がどういう風に使ってくださるかなどを考えて服を作ります。着る方に寄り添わなくてはお洋服ではない。服を作るとはそう言う使命のものだと思っています。

背中を押したり高揚感を感じていただく。着る方のいろいろなお気持ちに寄り添って作るものかなと。そこに自然環境やサステナビリティについての考えを入れていくことは大事なことだけど、今現在まだ出来る事、出来ないことがあるのは事実。出来る事から真面目にやっていきたいと考えています。
 なんだか寄り添い方がいいですよね。ショールとかコートとか、包み込んでくれるような寄り添い方はまだ他にもある。オーヴィルの良いところはテーラードやタイトスカートといったオンのシーンでも寄り添ってくれること。自信をもって人前に立て、自信をもって自分の年齢でいられる。ごまかさずに自分でいられるのって守られるだけでは不十分で、時には攻めの姿勢も必要なんです。その攻めの姿勢でもいられるテーラードって魅力だと思います。

川﨑 ありがとうございます。ごまかさずに自分でいられるって素敵なコトバですね。オーヴィルでお客さまに接客させていただくと、皆さん試着室から出ていらっしゃるバーッとお顔が輝かれて・・・。ご自身のお姿に高揚してくださるんです。

 すごい!でもフリルとかリボンとかそう言うかわいらしさで高揚感を与える服とは違いますよ。なぜ高揚感を得られるのかな。カッティングでしょうか?

川﨑 そうですね。服を作る過程で、箇所箇所で美しく見えるこだわりを詰めています。手首とか肩など決まっている王道のディティールだけでなく、もっと全体を細部までこだわって作っています。

 着る女性たちは、その川﨑さんのこだわりを一カ所ずつ言語化できないと思いますが、着た方のお顔が輝くというのは、そういうことが伝わっているということですね。

最後に9月のWWD JAPAN「サステナビリティ特集」でも取材させていただいた、オーヴィルのシグネチャー素材についてお話ししたいですね。

川﨑 はいぜひ。ご紹介ありがとうございました!


オーヴィルのシグネチャー素材は。





 薄手のリサイクルポリエステルはエレガントな服には使いづらいという声もあります。その解決策としてオーヴィルでは三重織のリサイクルポリエステル素材を使われた。デビューシーズンの春夏からシグネチャー素材として登場しこの秋冬も使っていますよね。

川﨑 はい、春夏コレクションではドレスやボトムスを、秋冬コレクションではジップアップブルゾンを作りました。三重織のリサイクルポリエステルは空気をはらんだような膨らみがあり、張りの美しい素材です。またウールとは違ったケアの楽さ、シワになり難いのも魅力です。

 その解決方法に驚きました。 課題を諦めてはいけないですね、課題があったときに自分の視点をいれて解決していくのがデザイナーだと思います。
そして内側に贅沢なヤクの落ち毛を使っています。サステナビリティっていくつもの考え方があって、リサイクルポリエステルのような化学の力で実現するリサイクルもあれば、生産者の生活を守るという社会的視点もあります。このヤクの毛は後者であり、エシカルな素材です。その「化学と社会」の2つの視点がこの1着には入っています。
 
川﨑 リサイクルポリエステルだから無理して使っているのではなく、デザイン生地の組織が新たな魅力になりました。ヤクの落ち毛は実際温かいです。でもそういったこともお客様にお伝えしていければ良いなあと思います。

 すごくいいシグネチャー素材だと思います!


向さんが選んだ1着は・・・
「コンパクトウールストレッチのハイネックシャツ&パンツ





 イタリアで最古の、B Corp認証を取得している素材メーカーのメンズ生地のセットアップ。メンズライクですが、実はメンズにはない素材使いとディティール、ワイドなシルエットも気に入りました。B Corp認証は、素材というよりも、利益と社会的意義を両立している企業自体に与えられる認証。取得している企業の服はサステナビリティの観点からも安心して着ることができます。

川﨑 今日は素敵なお話しをありがとうございました。向さんのファッションとサステナビリティへの熱い思いを伺えて、背中を押していただきました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!



<向千鶴さんプロフィール>
ファッションジャーナリスト 
横浜市出身。東京女子大学卒業。デニムアパレル会社エドウイン営業職、日本繊維新聞社記者を経て2000年にINFASパブリケーションズ入社。記者として主に国内外のデザイナーズブランドの取材を担当。2015年に「WWDジャパン」編集長に、2020年4月に執行役員「WWDJAPAN」編集統括サステナビリティ・ディレクターに就任。記者業務に加えて、ファッションスクールでの講義、省庁の有識者委員なども通じてファッション産業のサステナビリティ・シフトに尽力。2024年8月に独立し、CRANE&LOTUSを設立。引き続き「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターを務めつつ、活動の領域を広げている。
未入力の 件あります